「共創による新ビジネス研究会」
第一回「IoTとAIの可能性」を開催
- イノベーションの創出に向け、業種・業界を超えて熱い議論 -








ジェグテックは「共創による新ビジネス研究会」を発足し、2019年11月26日、27日の2日間、「IoTとAIの可能性」というテーマで第一回の研究会を開催しました。業種も会社規模も違う約20社、20歳代~60歳代の幅広い年齢の方々に参加いただき、IoTとAIソリューションを提供されている開発企業4社の事例プレゼンテーションをもとに、イノベーションの創出に向けた熱い議論が交わされました。
事後のアンケートでは、「今まで参加した同様のイベントの中で一番でした」
「また参加したいです」、「次回は知人を誘いたいです」「共創パートナーが見つかりました」など、うれしい返答をいただきました。

テーマに沿った企業の話を聴講

立ち位置の違いが際立つ4企業に、1日2社ずつ、各社1時間という長めの時間でお願いし、通常のオープンセミナーでは聞けない、詳しい事例などをお話いただき、質疑応答の時間も設けました。

登壇いただいた企業名と講演テーマ

株式会社FAプロダクツ
Smart Factory事業部長 谷口真一氏
「スマートファクトリー化が進まない理由と成功事例」
株式会社システムインテグレータ
代表取締役 梅田弘之氏
「ディープラーニングを使った異常検知」
i Smart Technologies株式会社
執行役員 CTO 今井武晃氏
「昭和の町工場の成功事例に学ぶ!IoTによる工場革命」
アステリア株式会社
Gravio事業部長 垂見智真氏 
「5分で実現、誰でもできる
“カジュアル”なAI/IoT実践と活用」
株式会社システムインテグレータ
代表取締役 梅田弘之氏
「ディープラーニングを使った異常検知」
ファシリテータとして、中小機構販路支援部 販路業務支援アドバイザー 杉浦 司が進行役を務め、各講演後、登壇者への質疑応答の後、テーマを提示、テーブル毎のグループにて討議いただきました。

1日目の夕刻は、懇親会を開催。小グループにて、意見交換など話が弾んでいました。

では、研究会の1日目からレポートしていきましょう。

研究会の冒頭、共創する意味を理解し、参加者が同じ方向に意思が向くように、1本の動画を視聴。仕事を出す・もらうという関係でなく一緒に考えていくことの大切さを再認識してもらうところからスタートです。

友人のような関係を築き議論を深める

1日目最初は、株式会社FAプロダクツ・谷口様のお話。環境問題に対応するデジタルファクトリーとスマートエネルギーの両方の視点を持った工場を設計されているとのこと。IoTの導入として、各種センサーを利用してデータを収集しても、工場のスマート化が進まないのは、全体を見通すデジタルマップがないからだとし、プラントシミュレーションの活用やデジタルマップの作成、IoTを利用する場合の工場レイアウト作成について、など、多くの事例を紹介されました。FAプロダクツが中心となって設立したファクトリービルダーのコンソーシアムである「Team Cross FA」によって、すべての製造業のスマートファクトリー化を目指す取り組みについても説明されていました。
話の中で、栃木にあるロボット+IoTの実験場所の紹介があり、質疑応答では、その場所は誰でも利用できますか?の質問も出ていました。(利用できるそうです)

グループ討議のテーマは、「スマートファクトリー化はどうして必要なのでしょう?自社で取り入れるとしたら、どんなスマートファクトリーにしたいですか?」でした。

グループ討議で積極的に議論する参加者のみなさん

次の登壇者は、株式会社システムインテグレータの梅田社長。
前半は「AIのキホン」の出版やAIについてブログを連載されているだけあり、とてもかみ砕いてAIの考え方、AIの中でもディープラーニングはどのような立ち位置にいるのかといった基礎的な話。後半は、製造業向けのディープラーニング異常検知システム「AISIA-AD」の開発の裏話を交えながら、データの学習方法や判定の課題、クラウドで学習しエッジで判定するシステム構成など、より実践的な内容を紹介されました。
質疑応答では、開発についての質問が相次ぎ、AI機能をシステム内に実装において、試行錯誤してる企業の様子がうかがえました。

討議のテーマは「異常を学習して欲しい事、物は何?(自社製品に限らず)」
でした。皆さん少し慣れてきて、テーマから脱線して、自社の得意分野を自己紹介しながら、実際にこんなことができたらいいな…など、具体的な意見が交わされていました。
意見交換が盛り上がってきたところで、同ビル内に用意した懇親会場へ…
懇親会場では、発注者、受注者という立場ではない、友人のような関係で議論を深めている光景が印象的でした。おつまみ程度の懇親会なので、1時間程度かと想定していましたが、会場の契約時間まで残っていた方も多く、複数の小グループで、前向きな意見交換が続いていました。

時間ギリギリまで意見交換が続いた懇親会

他業種の人との対話を深めたい

2日目最初の登壇は、i Smart Technologies株式会社 最高技術責任者の今井様です。自動車部品製造業である旭鉄工株式会社は、自社内で改善を積み重ねた実績を元にiXacsというIoTツールを開発。多くの中小企業にも利用して欲しいとの思いから、コンサルティングチームによるi Smart Technologies株式会社を創立され、今使っている設備そのままで改善実績が出るノウハウを盛り込み「1時間で始めるスマートファクトリー」として支援されています。

改善ノウハウと共に現場でのリアルな苦労話などもあり、製造設備を持つ企業から参加した方には、具体的にイメージしやすい内容だったのではないでしょうか。「今井さんのお話を聞けるので申し込みました。以前より今井さんのファンです!」という参加者もいて技術者の話として好評でした。アンケートでも、スライドが一番見やすく説明もわかりやすかった。との意見が多くありました。
事例に対し、IoTでデータを取らないと改善はできなかったのか?の質問には「後に改善できたと思うが、詳細なデータを示すことで、早く改善できたと思います。」とのことでした。

討議のテーマは「正確にカウントすることができたらメリットがある数字は何?」でした。
最後の登壇となったのは、システム間データ連携ツールで知られるアステリア株式会社の垂見様。今回は、月額500円から始められるIoTツール「Gravio(グラヴィオ)」をご紹介いただきました。

エッジ側の処理に特化した統合キットになっており、複数のセンサーモジュールがセットされ、PCに管理アプリをインストールして設定するだけで、センサーがデータ収集を開始し、プログラミングなしで気軽にIoTを始められるというもので、簡単なのに小規模から大規模まで柔軟にスケールアップすることも可能とのこと。参加者からは、こんなに安く簡単に導入できるのなら、すぐにでも利用してみたい、個人的にも利用してみたいという声も上がっていました。

グループ討議のテーマは「自社に限らず、世の中でどんなことに使ってみたいですか?」でした。簡単にデータが収集できるのは良いが、何のためにデータを取ってどう生かすのかを問われそう…という意見もでていました。
今回の研究会の総括として、最後はテーブルごとに、テーマに沿って話し合った内容を発表していただきました。「データによる見える化をして数値で細かくわかってしまうと反対に現場から反発があるのではないかという不安」や、「IoTを活用して製造系の人を早く育てることはできないか。」「小ロット多品種では学習時間が取れずAI導入の難しいだろう」など、さまざまな意見が出る中で見えてきたのは、業種が違うと感覚が違う、他業種の人との対話が足りないのではないか、お互いの事情を知らなすぎるのではないかということです。

ある方は「FAの製造系とIoT系に差があると感じる。IoT系の人はセンサーでデータを取るので油の匂いがしない」と表現していました。「IoT系ではPLC(機械制御装置)が設計できる人がいないという話が出ましたが、製造系に行くとPLCができる人が余っている。お互いの業界で交流が少ないと感じた。」とのこと。まさに今回の研究会が、お互いの業界をより深く知るきっかけとなればと思いました。

さまざまな意見が出た、みなさんの発表

研究会の最後に、ファシリテータの杉浦より次のようなメッセージをお伝えしました。

「新ビジネスを創出するには、勇気が必要です。アップルでさえもいろいろな失敗を乗り越えて今の姿があるのです。また、現場には失敗事例であれ成功事例であれ、イノベーションのタネがたくさんあるはずです。その小さなタネを見逃さないよう、いつも意識をしていることが大切です。」

ジェグテック会員が集い
「共創」の契機となる場を提供するに至った理由

ジェグテックは、2014年度より運用を開始し、2018年度末の時点でおよそ13,000件のマッチングを成立させてきました。しかし、これまでのマッチングは、発注側、受注側が1対1での結びつきがほとんどで、大企業から中小企業に向けての要件の固まった下流工程の案件が多いのが実情でした。中小企業が提案力を持ち、安定的かつ長期的に利益をあげる新ビジネスを創り出すためにどのような支援ができるのか。それが、ジェグテックの大きな課題でした。

AIやIoTなど新しいテクノロジーが生まれる中、近年の産業構造の変化に対応するためには、中小企業単体では難しいかもしれません。しかし、ジェグテック会員がともに集い、「共創」の契機となる場を提供することで、新ビジネス創出のお手伝いができるのではないかと考えたのです。
そこで、まったく新しい取り組みとして「共創による新ビジネス研究会」の発足を企画しました。

これまで開催してきた商談会と混同されないようにするため、募集要項では「他の人の意見に耳を傾けることができる方」「自分の意見を伝えることができる方」といった異例の条件も付けさせていただきました。そんな研究会に20社以上も応募していただけたのは、中小企業のみなさまにも同様の課題意識があったからではないでしょうか。

継続的なサポートで共創による新ビジネスの実現を

研究会終了後にお願いしたアンケートにも多くの意見をいただきました。冒頭にご紹介したように、「また参加したい」という返答を多くいただき、ありがたく感じる一方で、課題も見えてきました。より多くの方との交流をする機会が欲しかったという意見や、失敗事例についてもっと議論したかったなど、さまざまなお声を頂戴しました。これらは、次回の開催時に参考とさせていただきます。

まったく手探りの状態で開催された第一回の「共創による新ビジネス研究会」。課題は残ったものの、参加者の方に趣旨を理解してもらい、活発な議論を交わしていただけたのは、主催者としてとても嬉しいことでした。今後も第二回、第三回と継続していくことで、より深い関係の構築と、共創による新ビジネスの実現に向けて、全力でサポートしていきたいと考えております。